「対話」に時間をかける理由──初回相談で必ず聞くこと
当事務所は、最初のご相談に時間をかけます。
初回は、技術の内容だけでなくその背景まで含めて、少なくとも1時間はお話を伺いたいと考えています。
効率だけを考えれば、要点だけ聞いてすぐ手続に入るほうが早いのかもしれません。
それでも対話を大切にするのには、理由があります。
発明の「本当の価値」は、対話の中にある
出願書類は、最終的には技術を言葉に落とし込んだものです。
その技術がなぜ生まれたのか、どんな課題を解こうとしたのか、どこに工夫の核心があるのか──こうした背景は、図面や仕様書だけからは見えてきません。
じっくりお話を聞く中ではじめて、「この発明の本当に守るべき部分はここだ」と見えてくることが少なくありません。
発明者の方が中心だと考えていた部分と、実際に守るべき部分とがずれていることもあります。
「どう作ったか」だけでなく「なぜ」を聞く
発明者の方は、技術を正確に理解してもらおうとして、細部の説明に力が入ることがあります。
ありがたいことなのですが、細部を追うほどに、その発明が何を解こうとしたのかという幹は見えにくくなります。
ですから初回のご相談では、「どう作ったか」と同じくらい、「なぜそうしたのか」を聞くようにしています。
検討の末に捨てた代替案、想定している競合、事業としてどこで価値を生むのか。
こうした点が分かると、単に登録を取るための出願ではなく、将来その権利が使われる場面まで見据えた設計がしやすくなります。
たとえば電池に関する発明で、検討の途中で捨てた構造を聞いたことがあります。
自社では採らなかった構造でも、他社が採り得るのであれば、権利の範囲入れておく意味があります。
そこで、その構造まで含む形で請求項を組み立て、あわせて製造方法についても権利を取ることにしました。
聞かなければ、実際に採用した構造だけを押さえた、狭い権利で終わっていたと思います。
なお、初回のご相談に何を持ってきていただければよいかは、別記事「弁理士に相談するとき、何を持っていけばいいか」にまとめています。
対話は、担当制だからこそ生きる
当事務所では、最初にお話を聞いた担当弁理士が、明細書の作成から権利化、その後の活用までを一貫して担当します(別記事「なぜ「最初から最後まで、同じ担当者が」なのか──責任一貫体制に込めた理由」でお話ししています)。
途中で担当者が替わらないからこそ、最初の対話で得た理解を最後まで生かせます。
聞いた背景が引き継ぎのたびに薄れることなく、判断の軸として残り続けます。
急がば回れ
対話に時間をかけることは、遠回りに見えて、結果的に手戻りが少なくなります。
出願後に「本当はこう守りたかった」と気づいても、後から足せないことは少なくありません。
だからこそ、最初の段階でじっくり聞くことが大切だと考えています。


