それ、特許になりますか──「発明」の入口と、四つの関門
ご相談でいちばん多い質問が、これです。
「うちのこれ、特許になりますか」。
答えは「場合によります」なのですが、それでは役に立ちません。
実は、特許になるかどうかは、いくつかの関門を順に通れるかで決まります。
今回は、その関門を整理します。
判断の軸が分かれば、自分のアイデアがどのあたりにいるのか、見当がつくようになります。
関門その一──そもそも「発明」か
特許法が守るのは「発明」です。
発明とは、ざっくり言えば、自然法則を利用した技術的なアイデアのうち、一定の水準に達したものを指します。
ここから外れるものは、そもそも土俵に上がれません。
たとえば、自然法則そのもの(万有引力の法則など)や、単なる発見(新しい鉱物を見つけた、といった、人が作り出していないもの)は発明ではありません。
人が決めたルール(ゲームのルール、課税の方法、暗号の取り決めそのもの)も、自然法則を使っていないので外れます。
技能そのもの(熟練者のコツ)や、単なる情報の提示も同じです。
よく問題になるのがビジネスの仕組みです。
商売のやり方そのものは発明ではありません。
ただし、その仕組みをコンピュータやハードウェアで具体的に実現する技術的な工夫があれば、発明として扱われ得ます。
「アイデアそのもの」ではなく「どう実現したか」が問われる、と考えると分かりやすいでしょう。
生成AIを使って生み出したものの扱いは、「生成AIで作った発明・ロゴは特許・商標登録できる?──2026年時点の日本の考え方」で取り上げています。
関門その二──産業で使えるか
産業上利用できることも要件です。
実際上ほとんどの技術は通りますが、人間を手術・治療・診断する方法は、この関門で外れます(医療機器や医薬品そのものは対象になります)。
関門その三──新しいか(新規性)
出願の時点で、まだ世に知られていないことが必要です。
ここが、中小企業やスタートアップがいちばん足をすくわれるところです。
展示会に出した、論文で発表した、カタログに載せた、クラウドファンディングで公開した、製品を売った──こうした行為はすべて、自分の発明の新規性を失わせます。
自分がやったことでも同じです。
だからこそ、世に出す前に出願するのが鉄則です。
もし公開が先になってしまった場合の救済(新規性喪失の例外)については、「発表してしまった発明は、もう特許にできない?──新規性喪失の例外という救済」で紹介しています。
関門その四──簡単に思いつかないか(進歩性)
最後にして、最大の関門です。
新しいだけでは足りず、既にある技術から当業者(その分野の通常の知識を持つ技術者)が容易に思いつくものであってはいけません。
実務でも、拒絶理由の多くはここです。
既存の技術の組み合わせであっても、思いがけない効果があるなら、進歩性が認められる余地は十分にあります。
逆に、材料を別のものに置き換えただけ、数値を少し変えただけ、といったものは、理由なしには通りにくくなります。
だから、まず調べる
四つの関門のうち、新規性と進歩性は、他社の技術との比較で決まります。
つまり、自分たちだけで考えていても答えは出ません。
似た技術が既にあるかを調べてはじめて、見通しが立ちます。
この工程が先行技術調査です。
そして、進歩性は今ひとつでも、実用新案なら選択肢になる場合もあります(ただし、対象は物品の形状/構造/組合せに限られ、方法や材料そのものは対象外です)。
特許になるかどうかは、白か黒かではなく、書き方や範囲の取り方でも変わります。
手続の全体像は「特許出願から登録までの流れ──手続の全体像をつかむ」にまとめています。
当事務所は、「これは特許になるか」という段階のご相談を歓迎します。
技術の中身をうかがい、どの関門が問題になりそうか、どう書けば通る可能性があるかを一緒に整理いたします(特許のご相談や知財コンサルティング/顧問)。
※ 本記事は2026年時点の一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の判断は技術内容によって異なります。詳細は特許庁の審査基準など最新情報をご確認ください。

