特許権を侵害されたら──権利者側の動き方

自社の特許が侵害されているのではないか。
そう気づいたとき、すぐに「やめてほしい」と相手に言いたくなります。
ですが権利者側は、動き方を間違えると、かえって不利になることがあります。
今回は、侵害がありそうなときに権利者としてどう動くか、その順序と勘所をお話しします。

まず、本当に侵害かを確かめる

最初にすべきは、相手の製品や方法が、本当に自社の特許の範囲に入っているかの確認です。
特許請求の範囲(クレーム)と相手の製品を照らし合わせ、構成要件をすべて満たしているかを見ます。
また、訴訟になれば、相手は「この特許は無効だ」と反論できる(無効の抗弁)ため、自社の特許が有効かも点検する必要があります。
ここは判断が難しいので、早い段階で専門家に相談するのがよいでしょう。

証拠を確保する

侵害されていそうとなったら、後から「いつ、どんな侵害があったか」を示せるように、証拠を確保します。
相手の製品を購入して保管する、購入日やカタログ、ウェブサイトの表示などを記録しておく、といった地道な作業です。
損害賠償を請求する場面でも、侵害の範囲や期間を裏づける材料になります。

警告は慎重に──とくに「取引先」への警告

侵害の見込みが立ったら、相手方へ警告書を送り、製造・使用中止や話し合いを求めるのが一般的です。
ただし、ここには落とし穴があります。
相手本人への正当な範囲の警告は問題になりにくい一方、相手の取引先や販売店、ECサイトなどへ「あの製品は侵害品だ」と伝える行為は要注意です。
後で非侵害や特許が無効と判断される場合、警告という行為が営業誹謗行為(不正競争防止法2条1項21号)にあたると判断され、逆に自社が損害賠償を受けることがあります。
だからこそ、警告の前に侵害の有無と自身の特許の有効性を十分に検討しておくことが、そのまま自社を守ることにつながります。

交渉から、仮処分/訴訟へ

警告のあとは、中止やライセンス、和解といった話し合いに進みます。
まとまらなければ、製造や販売の差止め(特許法100条)と、損害賠償(102条の推定規定)を求めて訴訟を起こすことになります。
模倣品が急速に広がっているなど、急を要する場合は、仮処分で早期の差止めを求めることもできます。
なお、損害賠償が認められても、請求した額がそのまま通るとは限りません。
この点は別記事で扱います。

費用対効果で判断する

侵害されたからといって、必ず訴訟をすべきとは限りません。
訴訟には時間も費用もかかります。
侵害の規模、相手の資力、自社の事業への影響を見比べて、どこまで動くかを決めるのが現実的です。
交渉や警告の段階で止まるなら、それに越したことはありません。
攻めの一手をどう選ぶかも、戦略の一部です。

侵害に気づいたときは、最初の一手が結果を左右します。
慌てて動くより、侵害と有効性を確かめ、証拠を固め、慎重に警告する。
この順序を押さえておくことで、無用なリスクを避けられます。
訴訟の全体像は別記事「特許侵害訴訟の流れと費用──全体像をつかむ」にまとめています。
逆に警告を受けた側の対応は別記事「特許で警告書が届いたら──中小企業がまず取るべき初動」で取り上げています。
そして、そもそも侵害に強い状態をつくるのは、出願前の予防と、いざというときに使える権利の設計です。
その考え方は別記事「侵害訴訟の現場で学んだ、「使える権利」と「使えない権利」の差」でお話ししています。
侵害を分析で立証できるクレームにする具体策は別記事「その特許、侵害を証明できますか──分析で見つけられるクレームの書き方」で扱っています。

当事務所でも、侵害が疑われるときの初動──本当に侵害にあたるか、自社の特許が有効かの検討や、侵害の証拠・資料の整理──について、実務の観点からご相談をお受けしています。
権利範囲の検討や証拠の整理は知財調査/鑑定として、その後の進め方は知財コンサルティング/顧問として承ります(訴訟対応が必要な場合は、弁護士と連携します)。

※ 本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。侵害の有無や警告の適否は事案によって大きく異なり、判断を誤ると逆に責任を問われることもあります。制度も改訂され得ますので、具体的な対応にあたっては、最新の一次情報をご確認のうえ、個別にご検討ください。

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