特許で警告書が届いたら──中小企業がまず取るべき初動
ある日突然、他社から「あなたの製品は当社の特許を侵害している」という警告書が届く。
内容証明で送られてくることも多く、期限が切られていると、驚いてすぐに反論したり、謝罪して販売を停止したりしたくなりますが、どちらも危険です。
ここでは、特許の警告書を受け取ったときに、まず取るべき行動をお話しします。
慌てて「回答」も「停止」もしない
警告書に回答期限が書かれているからといって、慌てて対応しないことが大切です。
慌てて出した回答や謝罪は、後で不利な証拠として使われることがあります。
たとえば「うちの製品はここが違います」と一点だけ挙げて反論すると、それ以外の部分は認めたと受け取られかねません。
だからといって、製造や販売をすぐに停止したのでは、本当は侵害でなかった場合に、いたずらに事業を止めてしまうことになります。
したがって、まずは落ち着いて、事実を確認し検討する時間を確保します。
期限が短ければ、検討中である旨を伝えて、期間の猶予を求めることもできます。
本当に侵害か、特許は有効かを確かめる
次に、警告書に書かれた特許番号と請求項を確認し、自社の製品がその特許の範囲に本当に入るのか(侵害の成否)を検討します。
特許請求の範囲(クレーム)の構成要件を、自社製品がすべて満たしていなければ、侵害にはなりません。
あわせて、その特許を無効にできないかも調べます。
仮に訴訟になったとしても、無効であれば権利を行使できないという反論(無効の抗弁。特許法104条の3)が可能だからです。
これらを確認して非侵害か無効の見込みが立てば、相手方に対して反論しやすくなります。
使える「反論」は、意外と複数ある
非侵害の主張や無効の主張のほか、自社が相手の出願より前から同じ技術を使っていたなどの事情があれば、先使用権(特許法79条)を主張できる場合もあります。
あるいは設計を少し変えて特許の範囲を回避する、という方法も採りえます。
相手が本当に求めているものが、製造や販売の停止なのか、ライセンス料なのか、単なる牽制なのかによっても、取るべき対応は変わります。
なお、先使用権については、先に使っていたことなどを、こちらの側で証明する必要があります。
日付の入った設計図や仕様書、試作品の写真、部品の発注書や納品書、社内の会議記録といったものが残っているかどうかで、主張できるかどうかが変わってきます。
やってはいけないこと
一方で、避けたい対応もあります。
まず、警告書を無視して放置しないこと。
放っておくと、訴訟などに発展するおそれがあります。
次に、相手や相手の取引先に、感情的に反論して回らないこと。
事実に反することを言いふらせば、今度は自社が営業誹謗行為を問われかねません。
また、警告書や関連する書面をSNSで公開しないことも重要です。
早めに専門家へ相談する
侵害の判断や無効の調査、回答書の作成は、いずれも専門的な検討が必要になります。
弁理士や弁護士に早めに相談するほど、選べる手が多く、期限にも余裕をもって対応しやすくなります。
一人で抱え込んで期限ぎりぎりになるより、初期段階で相談するほうが、結果的に近道になることが多いと考えられます。
警告書が届いたからといって、それが「負け」を意味するわけではありません。
非侵害、無効、先使用、回避、交渉と、打てる手は複数あります。
大切なのは、慌てずに確かめてから動くことです。警告する側(権利者)の立場は別記事で扱います。
訴訟の全体像は別記事「特許侵害訴訟の流れと費用──全体像をつかむ」にまとめています。
そして、こうした場面に強くなる出発点は、出願の前に他社の権利を調べておくことです。
この点は別記事「先行技術調査/FTO入門──出願前や製品化前にやるべき調査」で取り上げています。
当事務所でも、警告書を受け取ったときの初動──本当に侵害にあたるか、その特許を無効にできないかの検討や、無効資料の調査──について、実務の観点からご相談をお受けしています。
知財調査/鑑定や知財コンサルティング/顧問でお手伝いいたします(訴訟対応が必要な場合は、弁護士と連携します)。
出典・参考
- 特許法(無効の抗弁=第104条の3/先使用権=第79条)、不正競争防止法(営業誹謗行為=第2条第1項第21号)
※ 本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。侵害の成否や無効の見込み、回答の適否は事案によって大きく異なります。制度も改訂され得ますので、警告書を受け取った際は、最新の一次情報をご確認のうえ、個別にご対応ください。

