化学・材料の発明、特許化の落とし穴──「数値限定」「パラメータ発明」とサポート要件

前回は、化学・機械・自動車と分野をまたぐことへの思いをお話ししました。
今回はそのなかでも私の軸である化学・材料の発明に絞って、特許化の勘所を取り上げます。

化学や材料の発明は、機械の発明とは少し違った難しさを抱えています。
形のある構造を図面で示しにくく、組成比や温度、分子量、あるいは物性値といった「数値」や「パラメータ」で発明を表現することが多いからです。
今回は、化学・材料分野で特許化につまずきやすいポイントを、実務家の視点から整理します。

化学の発明は「言葉と数値」で守る

機械の発明であれば、図面で構造を示し、その形状や配置で権利範囲を画することができます。
一方、化学・材料の発明は目に見える構造で表しにくく、「成分Aを○○〜○○重量%含む」「ガラス転移温度が○○℃以上」といった数値の範囲や物性値で特定することが少なくありません。
この「数値で守る」という特徴が、後述する難しさの出発点になります。

「数値限定発明」「パラメータ発明」でつまずきやすい点

数値の範囲やパラメータで発明を特定するとき、特に問われるのが「その範囲に、技術的な意味があるか」という点です。
たとえば「なぜその上限・下限なのか」を、実験データで裏づけられるかどうかが鍵になります。

ここで関係してくるのが、サポート要件(請求項の内容が明細書の記載に裏づけられていること)と実施可能要件(その分野の技術者が、明細書を読んで発明を再現できること)です。
データが不足していたり、範囲の根拠が示されていなかったりすると、これらの要件を満たさないと判断され、拒絶や、登録後の無効主張につながりやすい傾向があると考えられます。

出願の「前」に、データをどう揃えるか

こうした要件に応えるには、出願の段階で必要なデータをある程度そろえておくことが望ましいと考えられます。
具体的には、効果を裏づける実験データ、範囲の境界付近での挙動を示すデータ、比較例(範囲の外では効果が落ちることを示すもの)などです。

もっとも、研究はまだ途中ということも多いはずです。
出願のタイミングが早すぎてもデータが足りず、遅すぎても他社に先を越されたり、自らの発表で新規性を失ったりするおそれがあります。
この「いつ、どこまで揃えて出すか」の見極めは、化学・材料分野ならではの悩みどころです。

化学を理解する専門家と、早めに

どのデータが、どの程度必要か。それは技術の中身によって変わります。
だからこそ、化学・材料を理解する弁理士と、出願の前の段階から「何を準備すべきか」を相談しておくことが、強い権利への近道になると考えています。

当事務所は、高分子化学をはじめとする化学分野の実務経験をもとに、発明の本質とデータの揃え方を一緒に整理いたします。
アイデアや実験データの段階でも構いません、どうぞお気軽にご相談ください。

※ 本記事は一般的な情報提供であり、個別の出願における判断は技術内容により異なります。記載要件の解釈は事案ごとに異なりますので、具体的な対応は専門家にご相談ください。

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